労務に関する相談内容で比較的多いのが退職に関して。とりわけ、問題社員に辞めてもらいたいという相談は比較的解決が困難なものです。

このような状況で一番やってはいけないことが安易な解雇です。この記事では、解雇ではなく退職勧奨という方法を用いて、自社と合わない社員への対応を解説します。

まずは雇用維持の努力を

大前提として、安易に辞めてもらうという結論を出さず、まずは雇用を最大限に維持する工夫をする必要があります。人手不足の昨今、新規の採用はますます困難になっています。このような状況で企業に求められることは、今いる人材を最大限にいかすこと。課題があるのであれば、その課題を克服できるようにフォローしながら、雇用が維持できないかを模索しましょう。

辞めてもらうことの検討が必要なケース

雇用の維持を図ったにもかかわらず辞めてもらわないといけないケースの代表格としては、組織の価値観に合わない、問題行動が改善せず他の従業員に影響を及ぼすななど、組織の文化を壊す人です。

極端な話、どれだけ能力が高くとも、仕事ができたとしても、営業成績がトップであったとしても、組織の文化を壊す人は辞めてもらう方がよいです。

これは、組織のためというのはもちろんですが、本人のためでもあります。特に価値観が合わない組織で働くことは、個人にとって良い人生を送る上で大きな障害となります。今よりもあった職場に移る方がプラスになるのは間違いありません。

解雇と退職勧奨の違い

そもそも、解雇と退職勧奨はどのように違うのでしょうか。

簡単にいうと、解雇は会社から従業員に一方的に雇用契約の解除を通知すること、退職勧奨は会社から従業員に退職を促すことです。その他、両者の違いを表にすると次の様になります。

退職勧奨解雇
定義退職を勧めること雇用契約の一方的な解除
意志決定本人の自由な意志使用者側からの一方的な通知
面接の内容退職勧奨を行う理由を明示したうえで、今後の社内での処遇と退職に応じた際の優遇条件等について説明をする。
最終的には、退職するかどうかを決定するのは本人であることを明確に伝える。
解雇理由を明示したうえで、解雇通知を発行する。
面談は実施することが多いが、必ずしも面談が必要ではない。
面接する人基本的には、本人をよく知る管理者(評価者であることが好ましい)役職の高い社員複数名
上司と人事部関係者など複数名

解雇はしない方がいい理由

まず、解雇に関しては、解雇の手続きと解雇の有効性に分けて考える必要があります。

解雇の手続き

従業員を解雇するときには原則として、少なくとも30日以上前に解雇予告をするか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払うか、両者を組み合わせる必要があります。この条件を満たしていれば、労働基準法における手続き上は解雇できることになります。

解雇の有効性

問題は解雇の有効性です。手続き的には問題なくとも、そもそも解雇の理由が有効かどうかは別の問題です。この点が争いとなり、裁判に発展することが解雇の最大のリスクです。

裁判になってしまうと平均1年という長期間、裁判への対応が必要となります。加えて、解雇無効の判決が出ると、裁判期間中の給与を支払ったり、場合によっては賠償金を支払うことになり、合わせて従業員を職場復帰させることが必要になるケースもあります。

このため、解雇は極力避け、退職勧奨の方がよいのです。

退職勧奨のポイント

退職勧奨における最大のポイントは退職するかしないかは本人の自由な意思によるという点です。

対象社員が退職意思のないことを示しているにもかかわらず、使用者からの退職勧奨が継続してしまった場合は、「嫌がらせ」「退職強要」と捉えられてしまい、最悪の場合、慰謝料を請求されてしまう可能性もあります。

また、退職勧奨の手段・方法が社会通念上の相当性を欠く場合は、違法な退職勧奨であり、不法行為として損害賠償請求の対象となります。

そうならないためにも、適切な方法で退職勧奨を進める必要があります。

退職勧奨の流れ

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