厚生労働省は毎年4月に地方労働行政運営方針を策定しています。この内容から、労働基準監督署がその年度にどのような監督指導をおこなうかを読み解くことができます。

まず、今年度の地方労働行政運営方針の全体像を見ると以下の様になっています。

地方労働行政運営方針の全体像
  • 新型コロナウイルス感染症への対応
  • 最低賃金・賃金の引き上げに向けた支援の推進等
  • 個人の主体的なキャリア形成の促進
  • 安心して挑戦できる労働市場の創造
  • 多様な人材の活躍促進
  • 多様な選択を力強く支える環境整備

今回は上記の中から、監督対象になりやすい業種と、見られるポイント取り上げたいと思います。

監督対象になりやすい業種

方針の2つめに最低賃金・賃金の引上げに向けた支援の推進等があります。政府は、最低賃金に関して引き続き、加重平均が1,000円以上となる事を目指していますが、その中で、最低賃金の履行確保上問題があると考えられる業種等を特定しています。

つまり、方針に最低賃金が上げられている以上、それらの業種が監督の対象として選ばれやすい傾向があります。その業種とは以下の通りです。

最低賃金の履行確保上問題があると考えられる業種等
  • 製造業のうち、食料品製造業、繊維工業、衣服その他繊維製品製造業、木材・木製品製造業、電気機器器具製造業、家具装備品製造業
  • 商業のうち、卸売、小売、理美容業
  • 保健衛生業のうち、 社会福祉施設
  • 接客娯楽業のうち、旅館業、飲食店

業種を問わず監督対象になりやすい会社

一方、業種を問わず監督対象になりやすい会社というものもあります。

方針の最後にある多様な選択を力強く支える環境整備の中を見ていくと、安全で健康に働くことができる環境作りという項目があり、その中に長時間労働の抑制があります。つまり、ここ数年で取り組まれている長時間労働への対策も引き続き重点項目にはいっているということです。

さらにその詳細を見ると、長時間労働の抑制に向けた監督指導体制の強化等というものがあり、次の様な内容となっています。

各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場及び長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する 監督指導を引き続き実施する。

また、長時間労働の抑制の他にも労働条件の確保・改善対策という項目があり、特定の労働分野における労働条件確保対策の推進が掲げられています。この特定の労働分野とは、外国人労働者、自動車運転者、障害者である労働者、介護労働者を指します。

このことから次の様な会社が監督対象になりやすい会社です。

業種を問わず監督対象になりやすい会社
  • 単月80時間を超える36協定を出している会社
  • 自主点検で問題がある会社
  • 自主点検が未提出の会社
  • 集団指導を欠席した会社
  • 外国人労働者、自動車運転者、障害者である労働者、介護労働者がいる会社

監督指導時に見られるポイント

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