年度が変わり、厚生労働省の各種助成金制度についても、今年度の最新情報が出そろってきました。

中小企業にとって、採用、人材育成、定着支援、職場環境の改善など、経営のあらゆる場面であと一歩の後押しが欲しいと感じることは少なくありません。

そんな時に活用できるのが、返済不要の「助成金」です。

とはいえ、「数が多すぎて自社に合うものがわからない」「結局どれを選べばいいのか…」と迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、今年度注目の厚生労働省の助成金の中から、利用シーン別におすすめ制度を厳選してご紹介します。

「使える制度は逃さず活かす」ための第一歩として、ぜひご覧ください。

最低賃金アップに備える

キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース

近年、毎年のように大幅に上昇する最低賃金。時給のパートアルバイトを多く抱える会社にとっては対応に苦慮しているかと思います。

時給1,500円を目指すという国の方針は今のところ変わらず、今年も大幅なアップが予想されます。そのため、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの利用を検討してはいかがでしょうか。

内容

有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に一定の金額を支給。

助成額(1人あたり)

賃金上昇率中小企業大企業
3%以上4%未満4万円2.6万円
4%以上5%未満5万円3.3万円
5%以上6%未満6.5万円4.3万円
6%以上7万円4.6万円
  • 1年度1事業所当たりの支給申請上限人数100名
  • 「職務評価」の手法の活用により増額改定を実施した場合に加算
    1事業所当たり20万円(大企業の場合、15万円)
  • 有期雇用労働者等の昇給制度を新たに設けた場合に加算
    1事業所当たり20万円(大企業の場合、15万円)

本人または配偶者が出産する予定がある従業員がいる

両立支援等助成金 育児休業等支援コース

労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、労働者が育児休業を取得した場合に受給できる助成金です。

仕事と育児を両立できる職場作りの推進のひとつとして、育児休業の取得率を上げようという動きが続きています。そのため、社内で育児休業の対象者がいる場合、積極的に育児休業を取得してもらい、助成金の受給につなげましょう。

内容

育児休業取得時、及び職場復帰時に以下の様な取り組みを実施することで一定の金額を支給。

育児休業取得時
  • 育児休業の取得・職場復帰支援に関する方針の社内周知
  • 労働者との面談を実施し、プランを作成・実施
  • 対象労働者の育児休業(引き続き休業する場合は産前休業)の開始日の前日までに、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が連続3か月以上の育児休業(引き続き休業する場合は産後休業を含む)を取得
職場復帰時
  • 対象労働者の育児休業中に職務や業務の情報・資料の提供を実施
  • 育児休業終了前にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録
  • 対象労働者を原則として原職等に復帰させ、申請日までの間6か月以上継続雇用

助成額

種別支給額
育休取得時30万円
職場復帰時30万円
  • いずれも1事業主2人まで(無期・有期1人ずつ)

両立支援等助成金 出生時両立支援コース

育児休業を取得しやすい雇用環境整備などを行い、男性労働者が育児休業を取得した場合に受給できる助成金です。

内容

第1種、第2種それぞれ、以下の取組みを実施した場合に一定金額を支給。

第1種(男性労働者の育児休業取得)
  • 育児・介護休業法等に定める雇用環境整備の措置を複数実施 ★1
  • 育児休業取得者の業務代替者の業務見直しに係る規定等を策定し、業務体制の整備を実施 ★2
  • 男性労働者が子の出生後8週間以内に開始する一定日数以上(※)の育児休業を取得
    ※1人目:5日以上、2人目: 10日以上、3人目: 14日以上
第2種(男性の育児休業取得率の上昇等)
  • ★1および★2の実施
  • 以下のいずれかを達成
    • A 申請年度の前事業年度の男性労働者の育休取得率が、前々事業年度と比較して30%以上UP&育休取得率50%以上
    • B 申請年度の前々事業年度で子が出生した男性労働者が5人未満かつ申請前事業年度と前々事業年度の男性労働者の育休取得率が連続70%以上

助成額

種別要件支給額
第1種
男性の育休取得
対象労働者が子の出生後、8週以内に育休開始1人目 20万円
2・3人目 10万円
第2種
男性の育休取得率の上昇等
育休取得率が30%以上UP &50%達成 等60万円

家族の介護が必要な従業員がいる

両立支援等助成金 介護離職防止支援コース

2025年4月から介護離職防止のための雇用環境整備、及び介護離職防止のための個別の周知・意向確認等がスタートしました。これまでどちらかと言うと育児休業の取得促進の方向で法改正が行なわれてきましたが、介護に関してもあわせて促進する動きが始まりました。

労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、労働者が介護休業を取得した場合や、介護両立支援制度を利用した場合などに受給できる助成金です。

内容

介護休業
  • 介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針の社内周知 ★1
  • 労働者との面談を実施し、プランを作成・実施 ★2
  • 対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得し、復帰後も支給申請日まで継続雇用
介護両立支援制度
  • ★1および★1の実施
  • いずれかの介護両立支援制度を対象労働者が一定基準以上利用し、支給申請日まで継続雇用

(※)介護両立支援制度…所定外労働の制限制度 / 時差出勤制度 / 深夜業の制限制度 / 短時間勤務制度 / 在宅勤務制度 / フレックスタイム制度 / 法を上回る介護休暇制度 / 介護サービス費用補助制度

業務代替支援
  • 新規雇用
    • 対象労働者が介護休業を連続5日以上取得し、業務代替要員を新規雇用または派遣受入で確保
  • 手当支給等
    • 業務を代替する労働者への手当制度等を就業規則等に規定
    • 対象労働者が介護休業を連続5日以上取得または短時間勤務制度を合計15日以上利用し、業務代替者への手当支給等

助成額

種別要件支給額
介護休業対象労働者が介護休業を取得&職場復帰40万円
介護両立支援制度A:制度を1つ導入&対象労働者が当該制度を利用
B:制度を2つ以上導入&対象労働者が当該制度を1つ以上利用
A:20万円
B:25万円
業務代替支援【新規雇用】介護休業取得者の業務代替要員を新規雇用または派遣で受入
【手当支給等】
A:介護休業取得者の業務代替者に手当を支給
B:介護短時間勤務者の業務代替者に手当を支給
新規雇用:20万円
手当支給等A:5万円
手当支給等B:3万円

生産性向上のため設備投資をしたい

業務改善助成金

前述の通り、今年も最低賃金が大幅なアップすることが予想されます。人件費のアップに備えるためにも、自社の生産性を向上させる必要があり、そのための設備投資をしたり、コンサルティングをうけたりすることを検討しましょう。

内容

事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。

助成額

かかった費用の3/4~4/5(上限額は最大で600万円

働き方改革推進支援助成金

業務改善助成金同様、生産性の向上に加え、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む場合に利用可能です。

内容

生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む場合に必要な費用の一部を助成する制度です。その際、成果目標を設定し、その達成状況に応じて助成額が変わります。

対象となる取り組み
  1. 労務管理担当者に対する研修
  2. 労働者に対する研修、周知・啓発
  3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保に向けた取組
  6. 務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  9. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
    (小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

助成額

コース、及び取り組み内容に応じて最大約1,000万円程度

パートタイマーやアルバイトを正社員にしたい

キャリアアップ助成金 正社員化コース

年々審査が厳しくなり、使いづらくなってきているキャリアアップ助成金の正社員化コース。今年度の変更でさらに使い勝手が悪くなってしまいましたが、それでも比較的狙いやすい助成金です。

パートタイマーやアルバイトを正社員にする予定がある場合は活用しましょう。

内容

就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定した制度に基づき、有期雇用労働者等を正社員化した場合に助成されます。

助成額

企業規模、転換前の雇用形態に応じて、1人当たり15万円~80万円。

また、上記に加え、一定の条件を満たした場合に、15~40万円の加算があります。

従業員のスキルアップのための職業訓練を実施したい

人材開発支援助成金

事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

内容

コース概要
人材育成支援コース雇用する被保険者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
教育訓練休暇等付与コース有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
人への投資促進コースデジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
事業展開等リスキリング支援コース新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
建設労働者認定訓練コース認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成
建設労働者技能実習コース雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
障害者職業能力開発コース障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるため、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う場合に、その費用を一部助成

助成額

職業訓練にかかった費用に対して30%~100%、賃金助成が1時間1人あたり400円~1,000円、OJT実施助成が9万円~25万円、合計上限1,000万円。

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